その日相棒は珍しく長靴を履いていた。どうやら今日行こうと
していた日出小学校遺跡は、マムシの巣窟だ!と脅されたらしい。
さらにどこから見つけてきたのか、木の枝(彼にとっては重要な
武器らしいが…)を持参してきた。
さて、遺跡名となっている日出小学校は昭和52年に廃校となり、
現在はあまり人が踏み入れていないので、ものすごく草が生い茂っ
ている。なるほど、これならマムシもいるだろうなと思いつつ、
校舎のある場所までの坂を登っていると何だか少し不安になって
きた。後ろからついてきた相棒が言った「何かあったら、自分が
体を張って守りますから!」という言葉はとてもうれしかったが、
そんなに離れていては、確実に先に逃げられるだろうし、相棒が
師と仰ぐ方の“いつ何時、だれの挑戦でも受ける”という信念には
程遠い気がした。やはり自分の身は自分で守るのが妥当だろうと
思い、木の枝を持ってみた。(この行動が相棒をさらに不安にさせ
たらしいが・・・)登りきると、そこはグラウンドだった。遺物を探そう
としたが、背丈ほどの草がそれを阻み断念…。これでは、遺物を
探そうとしているのか、マムシを探すのかわからない。久しぶりに
緊張感漂う散策となった。幸いマムシや熊に会うことはなかったが、
もう二度と行きたくない…。
日出小学校が不発に終わったので、帰りがてら浦和小学校遺跡へと
足を運んだ。この小学校も廃校となっているが、学校までは舗装が
されており、難なく車で行けた。段丘の上で眺めがものすごく良い、
まだ校舎が残っており車をグラウンドに止め、熊が出ても助けなんか
来なさそうなので、カーステレオの音を少し高くしたまま周辺を歩い
てみると、畑があるではないか…。案の定、遺物がザクザク(って程
ではなかったが)見つかった。時期的には縄文後期が多いみたいだ。
少しだけ拾って帰る。この日は私の心の中では1勝1敗だったが、
相棒にとっては命があることで、全てに勝った様な顔をしていた。
何気に相棒のそういう所が気に入っている…。
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